さまざまな体験を中心に据えた教育を行っています。

心の通信

仏典童話

「いねむり和尚おしょう」

さく・まつしまやすはる

いねむり和尚カット

　むかし、たんごの山寺やまでらにいねむり和尚おしょうさんがいました。おきゃくさんがきても、いねむりをしていました。食事しょくじのときも、お経きょうをよんでいるときも、座禅ざぜんをしているときも、こっくり、こっくりと、いねむりをしていました。

　あるひ、旅人たびびとが山寺やまでらをたずねてきました。
「和尚おしょうさんはいますか。」

　めずらしく、和尚おしょうさんはいねむりをやめて、
「どうーれー。」

といって、げんかんにでてきました。

「和尚おしょうさん、どうかわたしのなやみを聞きいてください。」

和尚おしょうさんは、旅人たびびとを本堂ほんどうにあげました。旅人たびびとは本堂ほんどうにすわると、自分じぶんほどふこうな人間にんげんはいないと、そのわけをいっぱい和尚おしょうさんにうったえました。和尚おしょうさんは、

「うん、うん。」といって、ただ旅人たびびとの言葉ことばをきいていました。

お薬師さん

　どのくらいのときがたったでしょう。あたりは、だんだんとうすぐらくなりました。

　和尚おしょうさんは、ローソクに火ひをつけて、旅人たびびとにお薬師やくしさんのまえで座禅ざぜんをすることをすすめました。

　旅人たびびとが、座禅ざぜんをはじめると、和尚おしょうさんはそばでこっくりこっくりといねむりをはじめました。

　和尚おしょうさんがいねむりをはじめたので、旅人たびびともしらないあいだにねむってしまいました

　旅人たびびとは、夢ゆめをみました。

　なくなったおとうさん、おかあさんが夢ゆめにあらわれました。みんなやさしい顔かおで笑わらっていました。

「まあ、なんてかわいいおかちゃんだこと。」

　旅人たびびとが、この世よに生うまれたときのことでした。みんなとてもよろこんでいました

　ふと、きがつくと、お薬師やくしさんがやさしく笑わらっているのがみえました。その顔かおをみていると、旅人たびびとのこころにあかりがともりました。

『おとうさんも、おかあさんも、みんな私わたしがこの世よに生うまれたことをとてもよろこんでいた。

　旅人たびびとは、感謝かんしゃのきもちでいっぱいになりました。

　とてもしあわせなきもちになりました。

　なやんでいたことはどうでもよくなりました。

　旅人たびびとの顔かおは、すがすがしくひかっていました。

　そのときでした。和尚おしょうさんは、いねむりからめをさましました。和尚おしょうさんは旅人たびびとの顔かおをみて、

「ありがたや。ありがたや。お薬師やくしさんが目めをさまされた。なんときもちのいいことか。この生いきたお薬師やくしさんは、いっしょうの宝たからものだ。」

といって、旅人たびびとを礼拝らいはいされました。

おわり

過去のアーカイブ

・仏典童話「いねむり和尚」

・仏典童話「あたたかい手」

・仏典童話「天人になったトラ」