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京都舞鶴にある東舞鶴公園の近く 学校法人 聖山学園 ひばり幼稚園

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心の通信

仏典童話

「あたたかい

さく・まつしまやすはる

(1)

 さばくにまよいこんで、どのくらいたったでしょう。あつくなり、のどがかわいてきました。めまいがしてきました。とうとう、シッタカはたおれてしまいました。
 ふときがつくと、あたたかいかんじました。
そのが、シッタカのからだをおこしてくれました。かおえませんでした。ふたたびシッタカは、きをうしないました。

 どのくらいたったでしょう。
 あおいそら、さわやかなかぜ、つめたいみず
 シッタカは、オアシスのいずみのそばできがつきました。だれもいませんでした。べものがおいてありました。そのべものをむちゅうでべました。

(2)

 いくねんかがすぎました。
 シッタカは、ちちがなくなり、ははもなくなりひとになってしまいました。
 またときがすぎ、わるにんげんにだまされ、いえも、も、はたけもすべてとられてしまいました。
シッタカは、おやからもらったざいさんをすべてうしないました。

 まちのはずれで、シッタカはひとすわっていました。
 年老としおいたおぼうさまがとおりかかりました。
 シッタカは、おぼうさまをよびとめました。そして、ぶんにおこったわるいことをはなしはじめました。おぼうさまはしずかにいていました。 シッタカのはなしがおわると、おぼうさまはわれました。
「あなたのはなしをいていると、いまあなたは、だれしんじられない、というこころのようだ。そのようなこころで、あなたはわたししんじることができるか。しんじることができるならば、あなたをすくおう。しんじることができなければ、このろう。」
 シッタカは、おぼうさまをしんじることができませんでした。
 でも、そのことをすなおにうと、おぼうさまどこかにいってしまいそうなので、とりあえずうそいました。 「しんじます。」、と。

(3)

 おぼうさまとシッタカは、やまなかにあるおてらきました。
 おてらのそばにがけがありました。そのふかがけうえに、えだをはりひろげているまつがありました。
 おぼうさま、そのまつゆびさして、
「そのまつのぼれ!」
いました。
「はい。」
 シッタカは、がけのぼり、まつのてっぺんにあがりました。
「そのえだにぶらさがれ!」
 シッタカは、こわごわえだにぶらさがりました。
みぎをはなせ。」
「はい。」
 シッタカは、みぎをはなし、ひだりいつぽんでぶらさがりました。
ひだりをはなせ。」
 シッタカは、びっくりして いました。
「このをはなしたら、ちてしまいます。」
ちたらいい。あとわたしにまかせとけ。」
 おぼうさまは、しずかにげんのあることばでいました。
 シッタカがちゅうちょしていると、
わたししんじるか。」
 おぼうさまのこえに、シッタカはかくめました。
 シッタカは、ひだりをはなしました。
 シッタカのからだは、ちゆういました。
「あー。」
 めんにたたきつけられるとおもいました。
 しかし、シッタカのからだは、しっかりとおぼうさまのにうけとめられました。
 そのかんじに、なつかしいおもいがありました。むかしばくたおれたときに、たすけていただいたあたたかいかんじだったのです。
ばくたすけてくださったのは、あなただったのですか。」
 おぼうさまは、シッタカのはればれとしたかおて、
「あなたは、いまほとけさまののことをおもした。そのあたたかいかんじをたいせつにしてこまったひとびとたすけなさい。」
と、わらっていました。
 そののち、シッタカはしゆぎようはげみ、りっぱなおぼうさまになりました。

おわり

過去のアーカイブ

・仏典童話「いねむり和尚」

・仏典童話「あたたかい手」

・仏典童話「天人になったトラ」

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